大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

基準が曖昧なものほど奥が深いのだ

   

「おじょうちゃん、いい青に塗っといたよ。」

 

土建屋を営んでいた実家に出入りしていた職人さんに、
本棚をつくってもらったときのことです。

物置の改造という形で、
やっとの思いで、つくってもらった音楽室。
テーマカラーはブルー。

壁紙も、クッションも全部ブルーを選びました。

当然、そこにおくべき本棚もブルー。

自分でサイズを測り、
父に教わって設計図面らしきものをつくり、
ついに完成した本棚。

せっかくだから、と、
ペンキは専門外の職人さんでしたが、
気を利かして本棚を塗ってくれるというので、
「青く塗ってください」とお願いしたのです。

 

「おじょうちゃん、いい青に塗っといたよ。」

中学校から帰った私に、得意げに言う職人さん。

 

しかし、です

どう見ても、「緑」。

「みどりいろ」なのです。

 

いい色だろ〜。いい青だろ〜。
自分の作品にご満悦の職人さん。

ショックだったのもありますが、
なんと言っていいのかわからず、
ただ、「ありがとうございます」と言ったのを覚えています。

何年も経って、
その職人さんは色弱だったのかもしれないと思い至ってからもなお、
人の感覚の曖昧さへの不思議な気持ちは増すばかりです。

 

 

「青」ってなんだろう?

私が見ている「青」って、
他の人にとってどんな色なんだろう。

 

基準が曖昧なのは「色」だけでなく、
「音色」もおなじです。

 

いい音ってなんだろう?

いい歌ってなんだろう?

 

あたしに聞こえる「音」は、
他の人の耳にはどんな風に聞こえるんだろう??

 

基準が曖昧なものほど奥が深いものです。

 

今の時代、

ピッチもリズムもダイナミクスも、
歌のうまさは、たいがい数値で説明できるものだけど、
数値化できない「なにか」こそが、
自分自身にとっての、
音楽の、歌の、本当の価値を決める。

 

そして、それは100%パーソナルなもので、
他の人と100%おなじものを共有しているというのは幻想で。

 

だから音楽って面白いんだなぁ。

12656261 – portrait of young people having a party against a golden lights

◆10月29日(日) 鹿児島にて【MTLワークショップ in 鹿児島】を開催します。
◆コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』。限定公開のレッスン映像もごらんいただけます。購読はこちらから。
◆自宅で繰り返し、何度でも。ヴォイス&ヴォーカルのすべてが学べる【MTL Online Lesson12】。
次期受付開始は今しばらくお待ちください。

 - 音楽

  関連記事

ロックへの反逆

「お前なんかロックじゃねぇよ。オレは認めね〜ぜ。」 少し前のこと。 ロック的なサ …

何を切り取るか。どう切り取るか。

家族や友人たちと、昔の思い出話をしていると、 記憶に蘇ることや、「こんなことがあ …

よき時代のよきものを、 いい形で後世に伝える方法

高校時代、何が嫌いって「古文」の授業くらい 嫌いな授業はありませんでした。 使わ …

「こんな曲やるくらいなら、あたし、バンド辞める」

カバー曲ばかりやっていた学生時代、 すでに社会人バンドでがんばっていた高校時代の …

ギターソロが邪魔くさいぃ〜!?

「最近の子はギターソロになると、曲を飛ばすんですよ」 え?なんですか、それ? と …

「私の歌って、どうですか?」

「自分の歌ってどうなんだろう?」 歌う人誰もが一番知りたいのってそこなんだなと、 …

すごい演奏は、お互いの音をちゃんと聴くことからはじまる。

生演奏の面白さは、コミュニケーションの面白さです。 お互いの音を聞きながら、寄り …

人は、他人のにおいに「敏感」かつ「不寛容」なもの。

「角の○○さんのご主人、若い頃はカッコよかったのよ。 ハワイアンバンドにいたらし …

「譜面なんか読めなくてもいいっすよね?」

「音楽、やらないんですか?」 一般の方とお話していて、ふとそんな質問をすると、 …

この歌、どうして知らないの?

MTL定番の、 (そして、私自身が「ドS」と認定されるきっかけのひとつとなった) …