大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「音楽やる」ってことと、「音楽を仕事にする」ってことは違うんだ

   

生まれてはじめて、ライブハウスでライブをやったとき、
自分たちのライブのチケットをお客さんが買ってくれるということが、
それはもう嬉しくて、
なんだかプロになったような気分になったものです。

友達や家族や親せきが、2枚、3枚とチケットを買ってくれて、
会場がいっぱいになって・・・ちょっとした人気者の気分でした。

ところがね、
友達や親せきが来てくれるのは、せいぜい1回か、多くても2回。
基本は、お付き合い来場ですから、
自分で言うのもなんですが、
たいしてうまいわけでもない演奏や歌を、
お金と時間をつかって、何度も聞きに来てくれる奇特な人も
そうそういません。

いくつかのバンドで一緒にライブをやる、
いわゆる「対バン形式」でライブをやれば、
なんとか、格好つくくらいのお客さんは入っているように見えますが、

結局会場の半分近くを出演バンドのメンバーが占めていた、
なんてこともざらにあって、
ライブをやる意味ってなんだろうと、考えこむこともあったり。

なにより、お金が続きません。
ライブハウスによっては最低ノルマみたいなものを課すところもありますから、
リハ代持ち出しの上に、出演料を自分が払うなんて状態になると、
フリーターでがんばるのも限界があります。

なんとか音楽でお金が稼げるようにならないかって、
考えはじめるのって、そんなタイミングです。

運良く音楽業界のお仕事をもらって、
いわゆる「プロミュージシャン」の仲間入りをする人もいれば、
お店やイベント、結婚式などで、
演奏することでお金をもらえるお仕事につく人もいます。
先生になったり、インストラクターになったりと、
教える仕事につく人もいます。

でもさ、それって、
「音楽をやっている」っていうのと、やっぱり違う。

「計算が得意だから経理やる」とか、
「英語ができるから英会話の先生になる」っていうのと同じ。
音楽のスキルでお金をもらうお仕事を得ているだけで。

もちろん、職業音楽家、
いわゆるプロになりたいと目指している人にとっては、
それは特別なことかもしれないけれど、

自分の音楽をつくりたい、
自分自身を音楽を通して表現したい、
っていう思いとは全然違うところにあるんです。

これはもう、ひととおり、
ぜ〜んぶ経験して、
いい気になったり、凹んだりしてきた私だからこそ、
ハッキリきっぱり言えます。

やりたい音楽をやって、
生活が成立してますって言う人や、
ほんの一握りの、
もんのすんごい売れちゃったという人はともかく、です。

もっとお客さん入れるにはどうしたらいいかな。
もっといいCDつくって、いっぱい売りたいな。
一人でも多くの人に届けるにはどうしたらいいのかな・・・。

貧乏だって、バイトしてたって、
サラリーマンになったり、専業主婦だったりしたって、

そんな風に、ひたむきに、
本当に自分のやりたい音楽を追いかけることこそが、
「音楽やってる」ってこと。

そんな人を本当の「音楽家」だと、私は呼びたい。
そんなスピリットを追いかけたい。

ずいぶん遠くまで来たけど、
あたしもやっぱり、音楽家ってものでありたいんだよなと、
思う今日この頃です。

あなたのやりたい音楽は、なんですか?

●初心者からプロフェッショナルまで、月刊誌のように手軽に楽しく歌がうまくなるサブスク“声出していこうっ!Monthly Video Program”、はじめました!

 - Live! Live! Live!, 夢を叶える, 音楽人キャリア・サバイバル

  関連記事

「憧れのあの人は持っているのに、私は持っていないものリスト」

音楽に目覚め、 「いつかビートルズになる!」と頭の悪いことを真剣に夢見ていた中学 …

頼むから、自分の声、ちゃんと聞こえるようにしてください

歌う時は、いつだって、きちんと細部のニュアンスまで自分の歌が聞こえてくる環境で歌 …

穴を埋めるのか。山を高くしていくのか。

スタジオのお仕事が軌道に乗り始めた頃のこと。 私の歌を気に入ったから、プレゼン用 …

後悔とは違う。 後ろめたさとも違う・・・ライブのイントロは前夜から始まるのだ。

ライブやツアーの前夜。 ワクワクとはほど遠い気持ちで過ぎていきます。 後悔とは違 …

完成しない作品は、「作品」ではない

ずいぶん昔。 ユーミンがとあるラジオ番組で、 「美大で日本画を専攻していた」とい …

10回のリハより1回の本番

「10回のリハより1回の本番」 ミュージシャンたちが、異口同音に言うことばです。 …

フェイスシールドって、ハウりません?

ずいぶん昔のお話です。 サポートコーラスのお仕事で、 大きな会場を何本か回るとい …

アチチュードが、結果をつくる。

なにから始めたらいいかわからないなら、 憧れの人がやっていることを観察して、マネ …

音楽業界で「出会い」と「チャンス」をつかむ5つのヒント

音楽の世界で生きていくため、 認められるため、 生き延びるためには、 自分のゴー …

「いつはじめるか」じゃない、 「いつまで続けるか」が重要なのだ。

「やっぱりピアノは幼稚園くらいからはじめないと、モノにならないわよ。」 &nbs …