大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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演奏がイケてないのは、リハを録音してないから!?

      2015/04/19

「この間のリハがうまくいかなかった。」
「なんか、うちのバンド、上達しないんですよね。。。」
「自分たちの演奏とか、自信なくって」
そんな相談を受ければ、もちろん、私はこう言います。
「リハの音源、聞かせてみて」
驚愕するのは、そういう風に言う人に限って、
リハーサルを録音していないということ。

「え?だって、録音して聞いてみなくちゃ、
どこがどうイケてないか、何が原因なのか、
実際に自分の演奏がどうなのか、わからないじゃないの〜〜!?」

そうなのです。

イケてない人に限って、リハーサルや自分の練習を録音していないのです。

アマチュアバンドでも同じ。
学生たちのアンサンブル授業でも同じ。

なんでやねんっ!

プロでも、一流どころは、みな、自分たちの演奏を録音してチェックしています。
これをやっているか、やっていないかは、
本番の演奏に大きく関わってくるからです。
理由は・・・

1. リハーサル中は自分が演奏することに忙しくて、またはPA等の状況のせいで、 まわりの音を聞けない

自分の演奏でいっぱいいっぱいの状況では、
まわりの人の音は耳に入ってきません。

また、たとえ、ベテランでも、長年一緒に演奏をしているバンドでも、
慣れない環境で音出しをしながら、細かい音まで聞くことは不可能です。

また、リハスタなどはPA等が充実していないことがほとんどなので、
録音する場所を変えて、自分の耳が拾えない音を聞くことも大切です。

2. 自分自身の演奏を客観的に聞けない

ゴルフや野球のスイングはじめ、スポーツのフォームは、
後からムービーでチェックして、はじめてわかるものです。

自分自身の筋感覚と、実際のフォームが一致しているとは限りません。

また、特にボーカリストや管楽器奏者のように、
楽器がカラダの一部になっている場合は、自分が出しているつもりの音と、
周囲の人が聞いている音は違うのが当たり前です。

他の人が聞いている音をチェックすることなしに、いい演奏はあり得ません。

3. 全体の演奏がなんとなくしっくりこない原因は、
楽器を置いて、冷静に聞いてみないとわからない。

演奏がうまくいかない原因は、演奏家個人の腕だけとは限りません。

実際に他の人はどんな音やグルーブで演奏をしているのか、
ボイシングや音色はうまく混じっているか、
タイミングはどうか、
複数の楽器のアンサンブルはうまくいっているのか・・・
客観的に聞いてみないとわからないことはたくさんあります。

とりあえず、自分が間違えないで演奏できていればいいや、
というレベルは、一日も早く卒業して、
アンサンブルというレベルで、音楽を語れるようになりたいものです。

まずは、次回のリハから、録音して、じっくり聞いてみましょうね。

バンドメンバー全員で聞いてみるのも、緊張感があっていいものですよ。

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 - イケてないシリーズ

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