大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

起きてみる夢 寝てみる夢

   

「うちの子、声優になりたいって言ってるんですよ、先生」
そんなお母さんの相談を受けたことがあります。
「そうですか。今は、どんな活動しているんですか?」と聞くと、おかあさん、ちょっと困った顔をして言います。
「毎日、大好きな声優さんのやっているアニメを一所懸命見ています」。

相談に来たのも、本人に頼まれたわけではない。
業界に近いイメージのある私の話を聞いて息子さんにアドバイスをしたかったんでしょう。
お子さんと言っても、ティーンエイジャーじゃありません。
ガツガツ人脈を広げて、できることを手当たり次第やっていなくちゃいけない年頃です。

必死なようすのおかあさんがなんだか不憫で、思わず、
「おかあさん、それは寝て見る夢ですよ」と言ってしまいました。

起きて見る夢、寝て見る夢。
夢には2通りあります。
どんなに素敵な夢だって、眠っていたら叶わない。
目を覚まして、ちゃんと夢に向かって進んでいかなくちゃ。
いつまで経っても夢は夢のままです。

本人が寝て見る夢の世界にいるのに、おかあさんがどんなにがんばったって、叶うわけがありません。
なんて酷いことを言うの?という目で見られましたが、いやいや、ごめんなさい。
寝たまま夢を見たことがどんどん現実化するなんて、どんなスピでも聞いたことないです。

もしかしたら、私自身が、どんな夢も、目が覚めたら叶っているってことを、「100%信じてないから叶わないのよ!」って言う人もいるかもしれないけど。

え?それって、嬉しい?

グランドキャニオンに行きたいわ、と思う。
朝、起きたら、グランドキャニオンにいる。
本を出版したいわ、と思う。
目が覚めたら、自分の本が書店に並んでいる。

考えても、1ミリも嬉しくないし、まったく興奮しません。
そうじゃないんだな。全然ちがう。

旅の楽しさは目的地までのプロセスとワンセット。
人生の喜びも同じ。

お金貯めて、パスポート取って、チケット買って、ガイドブック買って、飛行機乗って・・・というプロセスそのものがゴールの一部。
プロセスを見出すのは、夢の一部。

寝たまま夢を見ているだけじゃ、なにひとつ変わらない。
誰もなんにもしてくれない。
どこにも行けない。
自ら気づいて、立ち上がって、足を前に踏み出して、はじめて自分が本当に望んでいることがわかる。

時には頭から水をぶっかけて、目を覚まさせることも必要です。
なんなら自ら水をぶっかぶって、目を覚ますこともね。
きっと。


■無料メルマガ『声出していこうっ!』。
ブログから踏み込んでディープなお話や、セミナーや講座、スクールなどの情報もお届けします。ご登録いただいた方全員に、『朝から気持ちい声を出すためのモーニングルーティン10』をプレゼント。バックナンバーも読めますのでぜひ。ご購読はこちらから。

 

 - Life, 夢を叶える

  関連記事

おとなになるって、素敵なことだぜ

おとなって、なんて純粋に音楽を追いかけるんだろう・・・ 最近そんな風に感じるシー …

「私の歌って、どうですか?」

「自分の歌ってどうなんだろう?」 歌う人誰もが一番知りたいのってそこなんだなと、 …

誰に話しても「ウソぉ〜」と言われるOnline映像制作秘話①

MTLオンライン12というオンライン講座を作り上げ、 やっとスタートにこぎつけた …

「火事場の馬鹿力」を操る!?

切羽詰まったとき、 追い込まれたとき、 人は、思いもよらなかった力を発揮し、 周 …

「妄想」は所詮「妄想」です。

小学校1年の終わりに急性腎炎で、2ヶ月ほど入院し、 (今となっては理由は定かでは …

「夢喰って生きられないぞ」

大学3年だったか、それとも4年生だったか。 アルバイトをしていた東京タワーのおみ …

タイムプレッシャーを逆手に取る

「どんなときに名曲が生まれるんですか?」 というインタビューに、 坂本龍一は、「 …

「憧れのあの人は持っているのに、私は持っていないものリスト」

音楽に目覚め、 「いつかビートルズになる!」と頭の悪いことを真剣に夢見ていた中学 …

若さのエネルギーなんて、誰だって持ってるし、誰だって失う。

あれは中学1年の頃。 美術の時間になると、 テストの成績の1位〜3位を、 常に争 …

「人生のピーク」なんて、死ぬまでわからない

世界的に活躍し、海外の大きなホールでコンサートなども行ったことのある、 ミュージ …