大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

感性は「お茶の間」で目覚める

   

「MISUMI、よく聞いとけよ。歌ってのはこうやって歌うもんだ。
テレビで流れてるやつは、歌じゃないぞ。
あれは歌謡曲って言うんだぞ」

 

私が長年、
どうにもこうにも邦楽を苦手と感じてきたのは、
物心つかないうちから、
サラ・ボーンやエラ・フィッツジェラルド、
ビリー・ホリデイのレコードをかけては、
こんな風にすり込み続けてきた父のせい(おかげ?)だと、
ハッキリ自覚しています。

 

 

 

豊かな感性を育てるのは、
教育や個々の努力かもしれませんが、

感性を目覚めさせるのは、
こんな、近くにいるオトナたちの、
いわば偏見や、思い込み、刷り込みなのではないでしょうか?

 

最近、某・大物歌手のお嬢さんのボイトレを担当しています。

まだ弱冠高校1年生の彼女。
きちんと歌のレッスンを受けたことも、
もちろん、ライブの経験なども一切ありません。

ところが、です。

この曲を勉強してくるようにと、
親御さんに携えられた曲を歌わせてみれば、
それはもう、びっくりするようないい声。
絶妙な節回し。

これを血というものかと驚く私に、
彼女はこんなことを話してくれました。

 

「おとうさんはね、歌番組見ながら、
すっごいダメ出しするんですよ。
間違ったものをいいと思うな。これはダメだ。
こんなんじゃ、違う、とかね。」
 

あぁ、おんなじなんだと、なんだか微笑ましく感じました。

お父さんは何にも教えてくれない。
「オレにはわからないから、って言う」と彼女は言うけれど、

一番大切な、「感性」をきちんと目覚めさせ、
育てているのですね。

 

人は、「お茶の間」では、無防備です。
構えてないし、防御も攻撃もしていない。

家族で交わされる情報は、ただ自分の中を通過するだけ。

しかし、そんな無防備な状態で自分の中を通過する情報が、
少しずつ、少しずつ、自分の感性を変えて行く。

 

 

次の世代への責任を感じるとともに、
多くの時間を共に過ごす人は、きちんと選ぶことも、
実に大切なのだと、思えてならない今日この頃です。

58617024 - happy child boy have fun with dad shaving in the bathroom

 - Life

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

夏の価値を高める「8月いっぴっ!」の習慣

こどもの頃から、 月初めの日記には、 今月やったるで!なことを書き並べ、 最後に …

ビジョンとチームワークが作品力になる。

お城や寺院、教会などのような歴史的建築物や、 アイディアとエンタテインメントが詰 …

胸の痛みを抱きしめて進め

やっとの思いでミュージシャンの端くれになって、 少しでも一流といわれる人たちに近 …

「東京って、やっぱりすごいんですか?」

週1回ほど京都の音楽学校で教えていた頃。 よく顔を見るギター科の学生と エレベー …

無価値感になんか負けないっ!

20代の終わりの頃、 洋楽コンプレックス、英語コンプレックスを払拭するために、 …

イケてないプレイヤーは弾きすぎる。

イケてないプレイヤーは弾きすぎる。 よく言われることばです。 例えば、 ソロを弾 …

スランプに陥ったとき、やってはいけない3つのこと

スランプに陥ることは、誰にでもあります。 なんだか不調で、何をやっても調子が上が …

「答え」が違うのじゃない。そもそも「質問」が違うのだ。

ずいぶん昔のお話です。   雑誌の付録に「美人顔の条件」というようなの …

けなし上手 vs. 誉め上手

「MISUMIは音痴だからさぁ。」 「ほら、あんたって、お勉強はできるけど人間的 …

「明日っからがんばろう」の「明日」は一生来ない。

「明日っからダイエットしよう」 「明日っから練習がんばろう」 「明日っから早起き …