感性は「お茶の間」で目覚める
「MISUMI、よく聞いとけよ。歌ってのはこうやって歌うもんだ。
テレビで流れてるやつは、歌じゃないぞ。
あれは歌謡曲って言うんだぞ」
私が長年、
どうにもこうにも邦楽を苦手と感じてきたのは、
物心つかないうちから、
サラ・ボーンやエラ・フィッツジェラルド、
ビリー・ホリデイのレコードをかけては、
こんな風にすり込み続けてきた父のせい(おかげ?)だと、
ハッキリ自覚しています。
豊かな感性を育てるのは、
教育や個々の努力かもしれませんが、
感性を目覚めさせるのは、
こんな、近くにいるオトナたちの、
いわば偏見や、思い込み、刷り込みなのではないでしょうか?
最近、某・大物歌手のお嬢さんのボイトレを担当しています。
まだ弱冠高校1年生の彼女。
きちんと歌のレッスンを受けたことも、
もちろん、ライブの経験なども一切ありません。
ところが、です。
この曲を勉強してくるようにと、
親御さんに携えられた曲を歌わせてみれば、
それはもう、びっくりするようないい声。
絶妙な節回し。
これを血というものかと驚く私に、
彼女はこんなことを話してくれました。
「おとうさんはね、歌番組見ながら、
すっごいダメ出しするんですよ。
間違ったものをいいと思うな。これはダメだ。
こんなんじゃ、違う、とかね。」
あぁ、おんなじなんだと、なんだか微笑ましく感じました。
お父さんは何にも教えてくれない。
「オレにはわからないから、って言う」と彼女は言うけれど、
一番大切な、「感性」をきちんと目覚めさせ、
育てているのですね。
人は、「お茶の間」では、無防備です。
構えてないし、防御も攻撃もしていない。
家族で交わされる情報は、ただ自分の中を通過するだけ。
しかし、そんな無防備な状態で自分の中を通過する情報が、
少しずつ、少しずつ、自分の感性を変えて行く。
次の世代への責任を感じるとともに、
多くの時間を共に過ごす人は、きちんと選ぶことも、
実に大切なのだと、思えてならない今日この頃です。
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