時間がかかることを怖れない
本気でうまくなりたいなら、「この1曲」と決め、歌いこなせるようになるまで、とにもかくにも徹底的に歌い倒せと、口が酸っぱくなるほど言い続けています。
レッスンをはじめたばかりの人は、私が1コーラス、数小節、いやさ、1音、と、あまりに重箱の隅をつつくようにこだわるので、不安を覚えるようです。
1曲の中には、何百、何千と音がある。1音1音、こんなスピードで練習させられたんじゃ、一体全体どれだけ時間がかかるかわからない。
まして、アーティストともなると、レパートリーは何十曲、何百曲もあるわけで、遠い目になる気持ちはよくわかります。
しかし、この「1音」の精度を上げることなくして、歌の本当の上達はあり得ません。
うまそうに歌うのは簡単なんです。
でも、小手先のテクニックでちょちょいと整えた、「うまそうな歌」では人は、けして感動しません。
そんなんで感動させられるなら、YouTuberはみんな人気歌手になっている。
でも、そうはなりません。人は本質にしか感動しないからです。
1音にこだわる。1フレーズにこだわる。
すると、あるとき、ぱ〜っと正解が見える。
最近よくお話しているところの、「解像度が上がる現象」です。
こうなればしめたもの。
一気に、これから歌う曲、これまで歌って来た曲の課題が見えてきます。
何曲も何曲も、こだわり倒す必要はないんです。
3〜4曲、「これで完璧」と納得できるまで、徹底的に歌い込んで、モノにすれば、
その他の曲の練習の精度とスピードも劇的に上がります。
その3〜4曲が文字通り、あなたのキャリアを支えてくれるようになるのです。
小手先の技術にこだわっていたら、ずっと曲に振り回され続けます。
ボスは歌い手であって、曲ではない。
心のままに、歌をコントロールできてこそ、本物の歌い手です。
私は天才ではありません。
ただ、人より長く一つの事柄と付き合っていただけです。
(アルベルト・アインシュタイン)
コアでマニアックな話や、「ここだけの話」をお届けするご購読はこちらから。もちろん、無料。バックナンバーも読めます。
ご登録いただいた方には、『朝から気持ちい声を出すためのモーニングルーティン10』をプレゼントしています。
関連記事
-
-
学習は、頑固で怠惰な自分の脳との戦いだ!
本来外来語であることばを、 そのまま日本語の音に置き換えただけの「カタカナ語」。 …
-
-
歌の「点」、ビートを意識する。
ドラムにビートがあるように、歌にもビートがあります。 ビートの意味は、いろいろな …
-
-
何年「基礎練習」するよりも、1回の「本番」
何年「基礎練習」をするよりも、一回の「本番」がパフォーマーを上達させる。 &nb …
-
-
MTLの講座はわかりにくいんじゃっ!
マジカルトレーニングラボ、通称MTL。 私の主宰するヴォイトレラボです。 「MI …
-
-
ぼんやりアドバイスは、時に、ただの悪口。
Radio Talkという音声サービスを、2年ぶりに再開しました。 以前やってい …
-
-
基礎の難しさに気付く~Singer’s Tips #4~
歌を上達したいという人に、 ウォーミングアップやストレッチ、 ヴォイトレなど、基 …
-
-
英語の歌詞って、どうやって覚えるの?
「歌詞を覚える」というのは、ある種の習慣です。 何を当たり前と思うか、という気構 …
-
-
耳で聞くのではない。脳で聞くのだよ、明智くん。
少し前、まずオケを聴け!歌うのはそれからだ!という記事で 歌のピッチやリズムが悪 …
-
-
で?なにがやりたいわけ?
高校時代、多重録音というものへのあこがれが高じ、 ラジカセをふたつ向かい合わせに …
-
-
歌い手の声の印象はこれで決まる!
プロアマ問わず、 さまざまなシンガーの歌にアドバイスをしていて、 もっとも気にな …
- PREV
- 自分がヘタに聞こえるのは、上達してきた証拠
- NEXT
- ちゃんと鳴らせ。