大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「なり方」なんて、きっとない。

   

 「普通の人とおなじことしてたんじゃ、何者にもなれないでしょ」

ボイトレに通ってくださっている某大企業の社長さんのおことばです。

なんにもしないで、なし得ることなんかなにもない。
これを可能にするには、なにをすべきか。
どんなことに取り組んでいけばいいのか。

必死に考えて、試行錯誤を繰り返して、ひとつ、またひとつと実現して行く先に、ある日ふと、何者かになっている自分に気づく。
それしかないわけです。

ところが、大多数の人が知りたいのは、「やり方」じゃなくて「なり方」。
「これとこれをすれば、こんな風になれるよ」ってことなんです。

「歌って、どうやって練習したんですか?」
「何才くらいから音楽やっているんですか?」
「どうやってプロになったんですか?」
「スタジオのお仕事って、どうやってはじめたんですか?」
「事務所、入ってるんですか?」

プロヴォーカリストとしてたくさんお仕事させてもらうようになって、一流の方たちともご一緒させていただく機会が増え始めた頃、いろんな人に、そんな風に質問されました。

はじめは、「そっか、みんな私のこと、興味あるのね」なんて、ちょっといい気になったものですが、だんだんと、その真意がわかるようになりました。

帰国子女でも、親が有名人とかいうわけでも、裕福なわけでも、ルックスがいいわけでも、音楽の英才教育を受けたわけでもない。事務所に所属するどころか、オーディションやコンテストに受かったわけでも、(当時はまだ)デビューしたわけでもない。
そんな、ごく普通の私が、どうして歌でお仕事できるのか?
きっとなにか秘訣があるに違いないと、みんな、思ったのでしょう。

同じ頃、学生時代のサークル仲間に偶然出会って、「(某)音楽学校行ったって噂で聞いたけど、やっぱりお仕事紹介してもらえるの?」と唐突に言われたこともあります。

さして目立つ存在でもなかった私のことが噂になっているというのにもびっくりしましたが、なにより「MISUMIは歌の学校に行ったからプロになれたんだ」と、自分自身を納得させている様子の彼女を見て、悲しい気持ちになったものです。

「やりたい」を追いかけ続ける、ごくわずかの、不器用で情熱あふれる人だけが、血だらけになりながらも、キャリアを積み重ね、ステージをのぼっていかれる。

今もそう信じています。

私にはきっと、そんな一所懸命な人の気持ちしか、わからない。
いつまでもそんな自分でありたいし、そんな人たちを全力で応援し続けられる自分でいたい。

そんな想いを新たにする日々です。

 



本気で歌を志すあなたに、ぜひ受けて欲しい。
6日間20時間で突き抜ける 
MTL vocal Bootcampの詳細はこちらから>>

 - Life, My History, The プロフェッショナル, 夢を叶える

  関連記事

「自信」に根拠なんか、いらない。

ヴォーカルのプロとしてさまざまなお仕事をしながらも、自分に全然自信が持てなかった …

大陸横断鉄道の「個室寝台」

生まれてはじめて、 海外をひとりで旅したときのこと。 カナダの大陸横断鉄道、 V …

歌のブートキャンプ、スタートします!/短期集中で歌はどこまでうまくなるか?

“歌を志す人のための新しい講座「MTL vocal BootCamp …

肉体は変化する

ずいぶん前のことになります。 クラプトンのコンサートのチケットがあるからと、 友 …

自分との約束

プロフェッショナルやスペシャリストを志すとき、大切なことはシンプルなことばかり。 …

人生のベストタイミングは「やりたい」「やらなくちゃ」と、ひらめいた時

“Never too late”は私の信条のひとつでもあ …

「 自己評価 x 体感努力量 」vs.「他人の評価 x 仕事の成果」

学生時代、こんな人は回りにいませんでしたか?   試験の朝、 「俺、め …

「あ、あれ、まだ書いてない」

「MISUMIさんのブログって、声や歌の話、ほとんどないですよね。」 そんな風に …

死ぬかと思うくらい馬鹿なこと、いくつやるか。

MTL12でお世話になったシンフォニーサロン(昨年9月閉館)のHPに、 私のイン …

ワクワクに飛び込め!〜 人生を動かすのは、説明できない「衝動」 〜

なにやってるんだろう?そもそも、なんでこんなこと、はじめちゃったんだろう?どうし …