大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「自分の声に興味ある人なんかいませんよ」

   

芸能界や音楽業界の人とばかり関わりあってきたからか、
それとも、私自身がボイストレーナーであるため、
そういう人が集まってくるだけなのか、
つい最近まで、「自分の声に興味のない人」の存在に気づかずにいました。

「MISUMIさんが思うほど、自分の声に興味ある人なんかいませんよ」

ボイストレーナーとしての理想を熱く語る私に、
私のメンターのひとり、Eさんがぽつりと言ってくれたことばです。

これにはドキリとしました。
何年も何十年も声と向き合い続け、
日ごと夜ごと、声のことを考え続けてきた私にとって、衝撃的な事実でした。

そう!これがまさしく、多くの日本人が抱えている問題ときづいたのです。

スピーチやプレゼンテーションの先進各国、欧米では、
学校の授業プログラムにディスカッション、ディベート、プレゼンテーションなど、
「人前で話す」がきちんと組み込まれています。
そこで、先生や生徒たちのフィードバックを通して、
話し方のみならず、自分の声そのものや発声について、考えることができるのです。

だから欧米では政治家のみならず、ビジネスパーソンの間でも、
ボイストレーニングがさかんなのですね。

一方、日本の学校の授業はレクチャー形式。
人前で話すという授業がほとんどありません。
よほど、両親や友人、先生などから、何か言われない限り、
または自分が突然目覚めない限り、
多くの人が「声」というものに意識を向けないまま社会に出てしまうんです。

あぁ、悲劇はそこで起こります。

「もうちょっとシャキッと腹から声出せ!」
「頼りなくて、クライアントに紹介できないな」
などと、上司に叱られたり、
会議で「聞こえませ〜んっ!」
「もごもご、何を言ってるのか全然わかりませ〜ん」とやじられたり・・・

中には仕事でテープ起こしをしていて、
「あまりにも自分の声が暗くてビックリ。」
などと言う人もいます。

そうしたことがきっかけで自分に自信がなくなってしまったり、
自分の声が嫌いになってしまったり、
という人もたくさんいるのです。

一生気にならないですむ人は、むしろラッキーだと言えますね。
見た目は鏡でチェックできるけど、
声は積極的に録音でもしない限り、チェックすることができない。

「声」に意識を向ける習慣、少しずつつけて欲しいです。

 - 声のはなし

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

no image
「怖いですかね?私?」

販売関係のお仕事で管理職を務める若き女性、Wさん。 「私、『もっと怖い人なのかと …

ビジネスマンのためのヴォイストレーニング

ただのミュージシャンだった私が突如ミッションに目覚め、 起業セミナーや出版セミナ …

ビブラートのかけ方ぁ〜!?

ビブラートのかけ方などというものをはじめて意識したのは、 『これなら歌える!ボー …

手指のように声を操る

指差す。つかむ。運ぶ。数える。挟む。 はじめはやや不器用に、やがて思い通りに、 …

気にならない人は、それでいいじゃん。

多くの人が、何かしらのストレスを感じて、初めて自分の「声」の存在に気づきます。 …

出音=声にこだわるべ〜し!

出た瞬間の「音」が勝負。 いろいろなところで、そう書いてきました。 一流は「音」 …

「”声のグラデーション理論”は世界でも類を見ない完全オリジナルだ」チャッピーは言った。

「声のグラデーション理論」。 数年前に開発し、新刊『これで、歌がうまくなるコツが …

ヴォーカリストは「声」が命

歌に関することを、ずいぶんいろいろと書いてきました。   姿勢、呼吸な …

語るように歌え。歌うように語れ。

思わず夢中で耳を傾けてしまう人の話というのは、実に音楽的だ。 ビジネス書の出版準 …

「声が低けりゃ威厳を感じるのか問題」を考える。

ヴォーカリストの悩みで一番多いのは、 「高い声が出ない」。 一方で、ビジネスパー …