旅に出よう!
「外国語を知らない者は自分自身の言語について何も知らない。」
と言ったのは文豪ゲーテ。
狭い世界の中で、自分自身を大きく見せようとすることに疲れたら、
思い切って旅に出てみましょう。
自分自身が価値あるものと信じていたものが、
別の世界では、何の意味もないものかもしれない。
反対に、取るに足らないモノだと思っていたものが、
信じられないほど評価されたりします。
たとえば、
外国に行ってはじめに戸惑うのが、外国人の愛想の悪さです。
私自身、生まれて初めて海外、ニューヨークに行ったときは、
周囲の人のあまりの愛想の悪さに、
「この人たちは、私が日本人だから馬鹿にしているんだ」、
と、勝手に思い込んで、凹んだモノです。
しかし、それは、「表情の習慣」によるもの。
多くの外国人が、相づちを打つときに、いちいち微笑みません。
反対に、外国人が日本に来ると、
「日本人は本当にいつもにこやかで、フレンドリーで素敵ね」とくる。
日本人の私たちからしてみれば、ごく当たり前のこと。
微笑むことさえしない人を見ると、
「なんて無礼なんだろう!」とむっとしてしまうくらいです。
悲しい映画を上映している映画館では、
日本なら、「すすり泣き」といわれる、
「ずるずる」「ぐしゅん」と鼻をすする音がするのが常識ですが、
欧米では、「ちーん」と鼻をかむ音が響き渡ります。
鼻をすするのは、非常に気持ちの悪いこととされている国が多いのです。
一方で、アジアの某国では、
鼻水も、痰も、すべて器用に地面に飛ばす、
という話を聞いたことがあります。
接待をされるとき、食事を残さないのが日本のマナーですが、
中国では、食事が残らないのは、接待している側にとって、
「充分ふるまわなかった」という意味で、恥ずべきこと。
中国に仕事で出かけ、接待を受けた時、
「もうお腹がいっぱいだから」と言っているのに、
次から次へとオーダーされて、面食らったことがあります。
「日本人は、なぜ心中するの?」とイギリス人の友人に訊ねられ、
はじめて、「心中」「切腹」「カミカゼ」などの根底に流れる思想が、
日本特有のものだと知りました。
そして、その根底に流れる、
日本人のアイデンティティともいえる、「覚悟」という思想を、
一度たりとも意識したことのなかった自分を恥じました。
余談ですが、「覚悟」ということばに、的確な英訳はありません。
当時、私が持っていた和英辞典には、
「決心」「悟り」「あきらめ」という英単語が並んでいました。
そこにBeautyが存在する、日本人の心を感じ、
海外に生活しながら、
はじめて、日本という国を心から愛おしく感じたものです。
自分の常識の中だけで生きていたのでは、
本当の意味で世の中を知ることはできません。
外国人の影響を受けろとか、
価値観やものの見方を変えろとか、そういうことではない。
逆価値の世界に身を置くこと、
自分自身のバックボーンを全く理解できない人や、
自身が理解不能と感じる人と交わることで、
本当の意味での、自分のアイデンティティを意識できるようになります。
存在するのは、「善悪」でも、「正誤」でもなく、「違い」。
それを知って、初めて、自分自身を、
特別な存在と認めることができる。
本当の意味での、自信がわいてくるのです。
旅に、出てみませんか?
関連記事
-
-
「ひどいことを言われた」と感じたときこそがチャンス
20代の前半で、当時10才前後先輩だったプロフェッショナルの先輩たちに、 それは …
-
-
80sを語ったっていいと思う
少し前、学生に「最近どんなの聞いてるの?」と質問したら、 「僕、結構古い音楽が好 …
-
-
15分間の名声(15 minutes of fame)
「誰もが知っている有名人」は、 自分が有名であるという認識こそ、もちろんあるけれ …
-
-
「フィルター」をぶっ壊せ
ティーンエイジャーの頃、 とにかくテレビに出ている「タレント」や「アイドル」 そ …
-
-
オトナとコドモの線引き
コドモの頃、オトナは特別な存在だと思っていました。 コドモとオトナ …
-
-
どうせ見えない未来なら、明るい側面だけを期待して生きる。
「MISUMI、そんなことしてて、将来どうするつもりなの?」 思春期の頃から、ア …
-
-
「強制OFF日」=ジャミーデーをつくる
命の次に大好きな音楽が仕事になった20代の頃は、 24時間音楽のことが頭から離れ …
-
-
だから、嫌いなものは嫌い!
人の価値観はそれぞれです。 高くても、無理しても、 お気に入りのバッグを買いたい …
-
-
「初めて」の恐怖を克服する
初めて出かける場所。 初めて会う人。 初めて挑戦すること。 人間は「初めて」にワ …
-
-
ビジョンとチームワークが作品力になる。
お城や寺院、教会などのような歴史的建築物や、 アイディアとエンタテインメントが詰 …
- PREV
- バッファーをとる
- NEXT
- 手っとり早く「オーラ」を身にまとう方法

