「妄想」は所詮「妄想」です。
小学校1年の終わりに急性腎炎で、2ヶ月ほど入院し、
(今となっては理由は定かではありませんが)、
その後も約3年間、学校のプールで泳ぐことを許されなかった私は、
誰よりも、友達と一緒にプールで泳ぐことに憧れを抱きながら、
来る夏も来る夏も、体育の時間ともなると、
プールサイドで膝を抱えて過ごしました。
そうしてプールサイドで、
友達が水の中を自由自在に行きつ戻りつするのを見ていると、
やがて妄想が生まれてきます。
自分は、プールに入れてもらえないだけで、泳げないわけじゃない。
一度、プールに入れば、私は、みんながびっくりするくらい、自由自在に、
信じられないスピードで泳げるんだ。
まともに水泳を習ったこともなければ、
小学校低学年の丸3年間、
おそらく片手で数えられるほどしか泳いだこともない。
それなのに、そんな風に自分を信じて疑わなかったのです。
「泳げないから、水泳サボってるんだろ?」
そんな風にいじめられたり、からかわれたりすることへの、
自分なりの防衛本能だったのか。
それとも、「自分は他の子とは違う、特別な存在だ」という、
得意の「思い込み」だったのか。
今となってはよくわかりませんが、
とにもかくにも、そんな妄想が高じて、
小学校4年の夏の終わりに、突然プールに入る許可をもらった私は、
学校の夏のハイライト、水泳大会の、
こともあろうに、25メートル競泳選手に立候補したのです。
25メートルなんて、妄想の中で何度も何度も泳いできました。
楽勝です。
水泳帽に何本も(水泳の級を持っているという証の)リボンを縫い付けた子たちをも、
ものの見事に、すいすいと追い抜いて、私が一番にプールの壁にタッチする。
その時のみんなの驚いた顔。
・・・妄想は完璧でした。
結果は。
もちろん。
惨敗どころではありませんでした。
結局私は、25メートルどころか、ものの3メートルもろくに泳げなかったのです。
プールの底を蹴って、カラダを浮かべて、水の中でもがく。
苦しくなってまた顔を上げる。
思いきり息を吸って、またプールの底を蹴って、水の中でもがく。
また顔を上げる。
そんなことを、ウンザリするほど繰り返しました。
歩いた方がおそらくよほど速かったでしょう。
4年生ほぼ全員の呆れた顔。ヤジ。
プールを上がった直後に担任の先生に浴びせられた、
「コサカは、どうしてできもしないことをやりたがるの?」という冷たいことば。
自分が「特別な存在」じゃない、と知った瞬間でした。
さて、今日のポイント。
どれほど純粋に、心の底から、
「自分にはできる」と深く深く信じていたとしても、
1ミリもカラダを動かさないで見る夢は、所詮、「妄想」。
妄想はフォームを整えないし、筋肉を鍛えない。
どんなに妄想を膨らましても、
やったこともないこと、やってみもしないことは、
絶対の絶対に、できるようにはなりません。
まず、やってみる。
現実と向き合う。
客観的な意見を聞く。
受け入れる。
また、やってみる。
妄想や勘違いが効果を現すのは、それからです。
プールサイドで膝を抱えて座っていても、なにも変えられません。
「できない」ことを恐れて、水に飛び込まなければ、一生泳げないままです。
呆れられて、やじられて、叱られて、
そこから前に進んだ人だけが、「特別な存在」になれるのです。
まず、やってみる。
それだけです。
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