『ヴォーカリストの曲選び/5つの基準』
さて、デモをつくるとき、
一体全体どんな曲を選んだらいいのでしょう?
オーディション用なら、
その1曲に自分の運命がかかっているわけですから、
もちろん、慎重に選曲すべきですし、
実験的に制作したり、課題として提出したりする場合でも、
ある程度の時間と労力をかけてつくるわけですから、
意味のある選曲をしたいものです。
今日は、(1曲しか提出できないデモ音源のための)
『ヴォーカリストの曲選び/5つの基準』をお届けします。
1.その曲を好きか?
好きでもない曲を情熱を持って、一所懸命練習できる人はまれです。
どれほど人に「向いている」と言われようとも、
好きになれない曲を選べば、曲にそういうオーラが乗ります。
ジャズを大好きな人が「演歌が向いている」と言われたからと、
損得尽くで自分をごまかしながら歌っても、
魂の奥底で、演歌を愛していないことは聞く人に伝わるもの。
寝ても覚めても演歌のことしか考えていない人に叶うわけもありません。
好きな曲。好きな音楽。
それすら選べないときは、一度心の棚卸しをする必要がありそうです。
2.その曲は自分のよさを充分アピールできるか?
日頃、元気で明るいポップチューンばかりを歌っているのに、
オーディションや試験になると、
いきなり小難しい、洋楽を選ぶような人がいます。
試験などでは、取り組む姿勢を見せることもプラスになるでしょうが、
一般的なオーディションに努力賞はありません。
テクニカルな歌が得意なら、自分のテクニックを充分生かせる曲を、
声が魅力なら、たっぷり声を聞かせられる曲を、
グルーヴィーな歌で売りたいなら、リズムの立った曲を・・・
どんなときも、「自分の美味しいところはどこか?」と考える。
パフォーマーの基本です。
3.他の人と違う「何か」を印象づけられるか?
オーディションでは、とにかく印象に残ることが大切です。
最近の音楽は映像がつくことが前提のようになっていますから、
映像のインパクトに頼っている曲も数多く存在します。
しかし、デモでは音だけが勝負。
例えば、ホイットニーの「エンダぁ〜〜〜〜」の超ロングトーン。
例えばマイケルジャクソンの「ほぉ〜うっ!」
例えばノラ・ジョーンズの鼻にかかったような息混じりの声・・・
自分の大好きなアーティストたちをよく聞いて、
彼らのなにが、特別なのか。
自分のなにが、特別になりうるのか?
考えてみるのも大切です。
4.その曲は聞きやすいか?
あまりに曲が複雑だったり、楽器のソロが長かったりする曲は、
ヴォーカルデモには向きません。
もちろん、テクニックの見事さを聞かせるなら、
複雑で難解な曲を歌うのもありですが。
あまりに曲が難解だと、聞く人の脳が忙しく働くため、
歌の善し悪しをジャッジできる状態ではなくなります。
カヴァーソングを選ぶなら、
「なんとなく聞いたことある」くらいの曲がお勧めです。
有名で人気のある、誰もが歌いそうな曲では、
ハードルが上がってしまうので要注意です。
5.聞かせどころはちゃんとあるか?
ビヨンセやホイットニーのように歌唱力が売りの人たちは、
曲の後半にどんどんキーチェンジをし、
アドリブもビシバシ盛り込んで、
声や歌唱力、パワーをこれでもかとアピールします。
ハイトーンヴォイスが売りの歌手は、
パワー系のアドリブより、
いきなりスコーンとホイッスルヴォイスを出すことを好みますし、
シャウターなら、ここぞというところで、
キメのシャウトをどんどん披露します。
ラップもこなす歌手ならラップ場面は必須ですし、
ファルセッターはわかりやすくファルセットを盛り込みます。
リズム感に自信があれば、
テンポの速い曲をたたみかけるように歌いますし、
ことばの表現力が巧みな歌手は、歌詞が印象的な曲を選びます。
しっとりと、静かな染みこむような声の歌手なら、
オケのほとんどないような、静かなシーンが必須でしょう。
どんなに自分らしい曲でも、
聞かせどころのない曲では、インパクトは半減です。
また、自分のアピールしたいポイントと、
曲の聞かせどころが一致しない曲では魅力が半減になってしまいます。
いかがでしょうか?
選曲に頭を悩ませるのも修行のうち。
いっちょがんばってみてください(^^)
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