デモをつくろう!
学生たちの夏休みの宿題に、
「好きな曲、1曲、完璧に歌って、録音してきて」
という宿題を出すことがあります。
こういう宿題を出すと、
生徒たちの性格や日常が実によくわかります。
日頃から、よくデモなどをつくっている子は、
「スタジオで録ってきた方がいいですか?」
「一発録りの方が良いですか?」
と、テクニカルな、頼もしい質問をしてきます。
出された瞬間に、
「それってiPhoneとかでも大丈夫なんですか?」
「オケってどうしたらいいですか?」
「たとえば、どんな曲が良いですか?」
と、はてな?満載になる、まだまだ不慣れな子たちもいます。
そして、
「あ。は〜い。わかりました〜。」と軽〜く受けて、
結局夏休み明けレッスンの前日に、
いきなりカラオケボックスかなにかで、
ちょちょいのちょいと録音してくるイージーな子たちがいます。
学校でも、社会でも、誰かから情報を一方的に受け取って、
それを覚えたり、応用したり、使い回したりしているうちは、
まぁ、たいがいのことは、その「誰か」の力でうまくいくもの。
しかし、
自分の頭で考えて、
自分のセンスで選び取って、
くふうして、行動して、形にして・・・
という「自分」フェーズに移行できなければ、
いつまでも、一本立ちできません。
デモをつくることは、いろいろな意味で、
「自分」を試す、試される、修行になるのです。
さて、夏休みの宿題しかり。
オーディションで送らなくてはいけない「デモ音源」しかり。
誰かに音源を提出することになったら、
一番最初にすべきことは何でしょう?
もちろん、いろいろな考え方があるでしょうが、
私は「目的を具体的に把握すること」に尽きると考えています。
例えば、私が上記の夏休みの宿題を出す目的は、
学生たちに夏休み、自ら選んだ好きな楽曲を
徹底的に練習して上達して欲しい、ということに尽きます。
もちろん、曲は、どんな曲でも、
本人が高揚するもので、何度でも練習したくなるものなら、
いいわけですが、
オリジナルを歌っている歌手が、
あまりにへたくそで音程が悪い、カツゼツが悪い、発声が悪いでは、
宿題も逆効果です。
また、カラオケで大騒ぎしながら、エコーばりばりかけて、
録音するようなクオリティでいいはずがありません。
考えればわかることを、考えない人が多すぎます。
まずは、「目的意識」をしっかり持つことなのです。
さらに、「誰が聞くのか?」も大切なゴール設定のひとつです。
ヴォーカルの先生という職業の人は、学生の提出物は、
たとえ、どんなにひどいものでも、最後まで聞くのが義務であり、
学生に対するリスペクトでもあります。
生徒の出来が悪いのは、結局は自分のせいですから、
「ひっどいなぁ・・・これ・・・」と思ったら、
胸に手を当てながら、どうしたらこの子をよくできるのか、
真剣に悩みながら聞くべきです。
しかし、大きなオーディションなどで
デモを聞くディレクターたちは違います。
彼らの仕事は「選別」。
いかに短時間に、的確に、
Yes vs. Noを判定できるかどうかが肝です。
ここでも、目的がわかってない人はあっと間に弾かれます。
アイドルを探しているのに、
いきなりメタル・シャウトしまくってたり、
J-popのシンガーを探しているのに、
インド音楽のこぶしバリバリな歌のデモを送られても、
(まぁ、極々まれに、聞いていたディレクターのマニアな琴線に触れることはあっても)
「なに考えているんだろう?」と思われるのがおちです。
いかがでしょうか?
まずはゴール設定、誰に聞いてもらうのかも含めての目的意識を、
ばっちりクリアにした上で、デモ制作に取り組んでみてください。
必ず結果が違ってくるはずですよ。
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