大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

後悔とは違う。 後ろめたさとも違う・・・ライブのイントロは前夜から始まるのだ。

   

ライブやツアーの前夜。

ワクワクとはほど遠い気持ちで過ぎていきます。

後悔とは違う。
後ろめたさとも違う。

胃の真ん中くらいになんだかぐりっとした感覚のものが居着いているくせに、
頭の中は妙にクリアで、

演奏曲目の資料を聴きながら、
構成や歌詞を無意識にざっくり確認しながら、

衣装は持ったかとか、チケット大丈夫か、とか、
そんな現実的な準備を進めたり、

普段放置しているようなところを、
なんだか一所懸命掃除してみたり。。。

 

それでも、一人のライブのときは、
ある程度、家の中は日常の空気が流れていますが、
これが2人セット売りの時は、家の中の空気がきーんとします。

仕事部屋からは、ギターを調整する音や、
弦を取り替える音などが延々と響いてきて、

普段なんだかんだ交わされる会話も、
全くといってないまま、
お互いが、長年続けてきた、自分自身の準備に没頭します。

 

「前夜って練習しないんですか?」
と、よく聞かれますが、

この時点でしゃかりきになって練習してたり、
歌詞を覚えようとしてたりするときは、
完全な準備不足。

まぁ、いい結果にはなりません。

ゼロとはいいませんが、
そんなことは、ないように心がけています。

 

このときから、長い、ライブへのイントロがはじまっているのかもしれません。

しーんとした空気の中で、
ちょっとずつ集中が高まっていくのを感じます。

そして、

持ち物や、パフォーマンス、進行などなど、
さまざまなシミュレーションを繰り返し、
繰り返し、していくうちに、

あるポイントで、

それはたいがい、パッキングを終える頃なのですが、

ふっと腑に落ちるというか、
はい。準備OKと感じる瞬間が訪れます。

 

そうなれば、もう大丈夫。

「なにひとつ、まずく行くわけはない。」
という、予感めいたもので心が満たされるとともに、

さっきまであった、胃の中のぐりっが溶けていくようです。

 

ここまで来たら、ライブ前夜の儀式は最終段階。

頭の中を空っぽにすべく、
なんの関係もない洋画を眺めながら、
ネイルをしたり、ストレッチしたり、お手入れしたり・・・

後はぐっすり、
まぁ、たいがいは、寝不足気味のスケジュールにはなりますが、
眠るだけ。

明日から鹿児島。

やっと腑に落ちました。

いざ。

21383380 - photo of a sexy female guitar player wearing leather boots and sitting on old leather couch.

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 - Live! Live! Live!

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