音は「楽器」じゃなくって、「人」が出すものなのです。
かつて、ドラムの神様と言われたスティーヴ・ガッドが来日した際のお話です。
ふらりとスタジオに入ってきたガッドは、
その場にあった、ごくごく普通のドラムセットを、
ちゃっちゃっちゃと、チューニングし、いきなり叩きはじめたそうです。
「その音は、まさに、ガッドの音だったんだよね」
とは、その場に居合わせたというミュージシャンのお言葉。
弘法筆を選ばずとはよく言ったもの。
そういえば、ふと回りを見回してみても、
名人と言われるプレイヤーたちは、
どんな楽器を弾いたって、叩いたって、
やっぱりその人の音になる。
実は我が家にも、
まぁ、いろんなギターがあるわけですが。
うちのジェフ夫さんも、一時期、
さまざまな種類のギターを集めては弾いていた時期があります。
彼の定番のストラト、レスポール、テレキャスは言うにおよばず、
フライイングV、アンペグのアクリルギター、ファイアーバード、
カジノ、セミアコ・・・etc.etc…
ギターは、ギア好き&収集癖のBoys心をかき立てる、
最高のグッズのひとつでしょう。
そして、ライブになると、手に入れたギターたちを、
嬉しそうに並べて、とっかえひっかえプレイする。。。
そういうの、やってみたいわけです。
もちろん、本人的には、
この曲をやるなら、あのギターじゃなくちゃとか、
この時代のサウンドは、このギターじゃなくちゃという、
こだわりがあるわけですが、
傑作なのは、ライブに来たお客さんが口をそろえて、
「いやぁ〜。さすが大槻さん。
どんなギターを弾いても、大槻さんの音になっちゃうんだよね〜。」
と言うこと。
ふふふ。
まぁ、それが、プレイヤーというもの。
結局、音は楽器じゃなくって、人が出すものなのです。
さて。
声も同じです。
どんなにがんばっても、
ストラトじゃレスポールの音が出ないのと同じように、
ビヨンセのカラダじゃなくちゃ出ない声、
スティーヴン・タイラーじゃなくちゃ出ない声、
というのは、もちろんあるでしょう。
しかし、ほとんどの人が、その域に行く前に、勝負を降りてしまうのです。
「所詮、私の声では、ここまでが限界」と言っている人で、
自分の声の限界まで出せている人には会ったことがありません。
私はそういう人たちを、
「フェンダー持ってる小学生」と呼んでいます。
神様がくれたノドという楽器は完璧です。
弦を変えなくても、
高いお金を払って調整しなくても、
素晴らしい音がする、唯一無二の楽器です。
いい音がしないのは、持ち主のせい。
音は、楽器じゃなくって、人が出すものなのです。
あなたの楽器、ちゃんとつかえていますか?
購読はこちらから。
関連記事
-
-
『ライブ前に自分に問うべき10のことば』
ライブ直前、自分のブログを読み返していると、 なんだか胃が痛いような気持ちになり …
-
-
楽しくやるから、いい仕事ができる。
ニューヨーク時代、日々の生活で最も気になったのは、 巷で働く人たちのやる気のない …
-
-
「生みの苦しみ」
作品をつくり出すことは、非常に苦しい作業です。 例え …
-
-
”飽きない”。”慣れない”。”手を抜かない”。
何年やっている曲でも、 自分自身がその曲と向かい合うたびに、 新しい発見があった …
-
-
声を伝えるのに必要なのは「デリカシー」。「気合い」じゃないんですよ。
音の波形ってみたことありますか? 音は空気の振動。 特殊な装置をつかうと、 その …
-
-
誰もが、自由に歌えるカラダを持っている。
もしも、何も考えず、なんの苦痛もなく、 どんな曲でも、素晴らしい声で自由に歌えた …
-
-
「声」は自分で選ぶ。〜Singer’s Tips #8〜
「●●みたいな音楽やりたいんですけど、声質が向いてなくて」 「△△さんみたいに歌 …
-
-
「お前、練習してんのか?」
先日、とある忘年会で、大先輩のミュージシャンに、 「MISUMI、ビジネスはいい …
-
-
「声」は映画のBGMと似ている
他人の話を聞いているときに「声」に意識を奪われるなんて、 話し手の声がよほどユニ …
-
-
ヴォーカリスト必読!マイクとモニターの超絶役に立つお話!!!〜後編〜
たくさんの反響をいただいた昨夜のブログ、 『ヴォーカリスト必読!マイクとモニター …
- PREV
- 「道場破り」「ゲリラ戦」「修行」・・・?
- NEXT
- 最後に「正解」を決めるのは誰だ?

