大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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人間関係は「見極め」と「覚悟」なのだ。

   

最近、「あぁ、なんでこの人は、わかんないんだろう。」と、
苛立つことが立て続けにあって、人間関係に少々疲弊気味です。

 

「情報の価値は受け手が決める」とすれば、
相手が「わかんない人」なんじゃなく、
「わからせられない」こちらの伝え方の問題かと、
しばし、コミュニケーションについて考えてみました。

 

そもそも、人間関係にはなんかしらの前提があるものです。

主である「私」と、相手との関係性。
それぞれの役割。
そして、何をゴールに関わりあっているのかという志向性。

 

例えば、友達という関係なら、
笑いあったり、慰めあったり、
話を聞いたり、聞いてもらったりという役割があって、
一緒にいることで、お互いの人生が楽しく豊かにしたいという、
暗黙のゴールがあります。

この人は人の話を聞かない、
この人の話は面白くない、などという人とは、
そもそも「友達」になりませんし、

仮に友だちづきあいをはじめたとしても、
一緒にいても楽しくない、豊かにならない人とは、
友人関係は続きません。

 

仕事における人間関係の「前提」はもっとシンプルです。

バンドならそれぞれの受け持ち楽器、役割があって、
いい演奏をして、お客さんを楽しませるというゴールがある。

先生と生徒という関係なら、
先生は、生徒の成長を最大限に考えて導く、
生徒は、先生の教えを受け入れ、自ら学ぶという、
それぞれの役割がある。
ゴールは生徒自身の成長です。

組織なら役職がありますから、
働く人は、それぞれの役割をきちんとこなしながら、
組織の発展に貢献する。

上に立つ人は、
組織を発展させるため、
チーム力を高めるため、
働く人たちが幸福に働ける環境を整える。

 

こうした「前提」がわかっていないから、
もしくは曖昧だから、
人間関係そのものが揺らぐのではないか。

本来の関係性と違うことを期待するから、
期待する役割をどちらかが果たしていないから、
コミュニケーションがうまくいかないのではないか?

もしくは、ひとつの人間関係に、
複数の役割を持たせようとし、
欲張ったゴール設定するから、
思い通りにならなくて、疲れるのではないか?

 

例えば、楽しむことがゴールの趣味のバンドであるなら、
お互いの関係性は「友達」が基本。

リハやライブの後に一緒に飲んで、おしゃべりして、
楽しくない人とはやりたくないし、
多少うまくても、人として好きになれない人と、
無理にやる必要もありません。

しかし、バンドとして商業的に成功することがゴールなら、
その人が面白くない人や面倒くさい人だったとしても、
人気があって、腕が確かで、やる気もあれば
充分関係性は成立するわけです。

この「前提」がごちゃごちゃと整理されていないから、
なんか、モメちゃう。

 

先生と生徒の場合もそうです。

教える側としては、
ここまではクリアして欲しいというゴール設定がある。
そこに向けて、最大限の努力をするのが、
教える側の義務です。

ところが、自分自身のゴール設定が低い、
そもそもゴール設定のないような生徒は、
そんな教える側の努力を、
苦痛に感じ、逃げ出したくなったりします。

もちろん、
先生によっては、最初からゴールなど設定していない人もいますし、
生徒にあわせてゴール設定を低くするという先生もいるでしょう。

一方、実力不足で、
生徒のゴール設定に応えられない先生もいます。

いずれにしても、
先生や学校を選ぶ段階で、
自分のレベルや、ゴール設定をきちんと確認しないと、
お互いにとって不幸なことになりかねません。

 

組織も同じです。

組織には組織の方針とブランドがある。
組織の意図がある。

組織では、役割をきちんと果たし、
組織に貢献することが求められます。

他のメンバーとハッピーに仕事ができることも、
要求される能力の一つ。

意識の高い組織に関わりたいなら、
高い意識を要求されることはあたりまえです。

反対に、自分がどんなに高い意識を持ち、
上昇志向でがんばっても、
組織のベクトルが別の方向に向いていれば、
空回りで終わってしまいます。
時に疎まれる結果にもなりかねません。

組織に関わりたいなら、
関わる前にきちんとそうした前提を見極めて、
覚悟を決める必要があるでしょう。

そこにコミットメントがないから、
こんなはずじゃなかった、
こんなの無理だと、
ストレスを感じたり、影で愚痴ったりすることになるわけです。

 

コミュニケーションがうまく行かない時は、
お互いの「前提」に食い違いがあるとき。

どんなシーンであれ、人と関わるには、
「前提」を見極め、覚悟を決めることが大切です。

これができなかったら、結局、どこへ行っても、
「ここは違う。」
「この人は無理だ。」と
逃げ出すだけの人生になってしまうのですね。

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