大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

期待される人であれ。

   

ニューヨーク時代のこと。
週1回、ジャズダンススタジオでレッスンを受けていました。

世界中からプロダンサーが集まるスタジオです。
中級以上のクラスは、いつもショーを見るような迫力で、
ただただ、見とれるばかり。


私が取っていたのは「踊るのためのカラダづくり」が目的の、
初心者向けクラスでした。

全レッスン時間の4分の3以上がストレッチと筋トレで、
地味でオタッキーなレッスンが大好きな私にはぴったり。

最後にちょっとだけ曲をかけて、
インストラクターが短い振り付けをします。

 

ある日、インストラクターのレスティフォさんが、
私が完コピをしていたチャカ・カーンの曲を流しながら、
短い振り付けをはじめました。

 

振り付けというと、
いかにも華麗に踊っている風ですが、まぁ、なんちゃってです。

それでも、得意のチャカの曲。
しかもレパートリーの1曲。
たいして身体は動かないんですが、
不思議に、ものすごくエネルギーが乗りました。

 

2グループに分かれて、
交代にパフォーマンスをしていた時のことです。

イントロが流れる瞬間に、
レスティフォさんが、みんなの注意を私の方に向けながら、

「彼女の踊りを見ていて。
彼女は曲を感じて、それを全身で表現しているのよ。」

と、言っているのが目に入ってしまいました。

 

みんなの視線が一斉に私に注がれます。

テンパりました。

いいとこ見せなくちゃ、という気持ちと同じくらい、
失敗したらどうしよう、と緊張し・・・
振り付けすべてが、見事にぶっ飛びました。

私はモジモジし、照れ笑いを浮かべながら、
なんとか、その場をやり過ごすことに必死でした。

 

みんなが呆れたような、がっかりしたような顔をした、その時です。
レスティフォさんが私に向かって、こう言いました。

「自意識過剰もいい加減にしなさい!
できないからって、モジモジうじうじ踊るなんて、みっともないっ!」

私に期待し、みんなのお手本になって欲しいと思ってくれていた、

 

レスティフォさんの思いを、私は見事に裏切ったのです。

 

もうずっとずっと昔のことなのに、
私は、あの時のレスティフォさんの、
がっかりした顔を忘れることができません。

 

期待にこたえられなかったことが悔しかった。

自意識過剰になって、
モジモジ、へらへらしてしまった自分が許せなかった。

なにより、大切なシーンで、
実力を出せなかった自分が腹立たしかった。。

 

私は、あれ以来、
一度だって、人前でパフォーマンスをするときに、
モジモジ、うじうじ、へらへらしたことはありません。
あんな後味の悪い想いは、一生に一回だけで充分です。

 

実力が追いつかないなら仕方ない。
しかし、大切な場面で力を出し切れないことは、
悔やんでも悔やみきれない。

まして、自意識過剰になって、
照れ笑いや追従笑いを浮かべるなんて、
負け犬や卑怯者のやることだ。

 

いつもいつも最高のパフォーマンスができなかったとしても、
せめて、期待してくれる人の思いに恥じない、
精一杯の自己表現をしていこう。

 

そう心に誓ったできごとでした。 

 - My History, 夢を叶える

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