「やぶヴォイストレーナー」
「しばらくがんばってヴォイトレに通ってたんですけど、
全然成果が出なくて・・・」
そんな話を小耳に挟むと、
思わず身を乗り出してしまうのが、私という人間の性。
「どんなことやってたんですか?」
揚げ足を取りたいわけでも、
産業スパイをするわけでもありません。
純粋に、職業的興味で、
「成果の上がらないヴォイトレ」というもののデータを集めたい。
なぜ成果が上がらないのか、理由を検証したい。
せっかくお金と時間を投資したのに、
「やっぱり、ダメだったか」と肩を落としている人たちに、
ちょっとでも有益なアドバイスをしたい。
そんな衝動に駆られるのです。
「成果の上がらないヴォイトレ」の話を聞いて、
「それはレッスンのせいじゃなくて、
あなたの取り組み方の問題ですね」と、
告白してくれた人をたしなめることも、
まぁ、ゼロとは言いません。
しかし、7割以上が、
「いやいや。それやってても、あなたの悩みは解決しないから。」
と、眉毛が片方上がっちゃうような、
もやもやするレッスンのお話。
そして、残りの3割ほどは、
「は〜!?ちょっと、そのトレーナー、ここに連れてきてくれる!?」
とシャウトしたくなる、驚愕の勘違いレッスン。
よそ様のやっていることをとやかく言うつもりはありません。
受けているレッスンに満足しているという方を、
洗脳したり、勧誘したりする気はさらさらないし、
第一そこまで暇じゃありません。
ただね。
腹が立つんです。
なんの根拠もない「思い込みメソッド」。
今さらのように繰り返される「根性論」。
聞きかじり、寄せ集め、未消化の「なんちゃってレッスン」。
なんでやねんの「スピリチュアル系ヴォイトレ」。
そして実績も実力もない、
○○学校出ただけの「でもしかトレーナー」・・・。
歌手やアナウンサー、役者志望などの人はともかく、
一般の人がヴォイストレーニングに通おうと決心することって、
英会話に通おうとか、
ジムに通おうとか決心することよりも、
はるかにハードルが高いと感じています。
ビジネスに直接関係するスキルというわけじゃない。
健康やダイエットに直結するとか、
キレイになれるとか、
人にほめられるとか、
資格が取れるとか・・・
そんな風に、かけるお金や時間や労力が、
わかりやすい形で返ってくる、というものでもありません。
英会話やジム通いを、ゼロをプラスにしていく行為とするなら、
ヴォイトレはマイナスをゼロに近づけていく行為。
そもそものスタート地点が、
コンプレックスや悩みであるケースが圧倒的に多いので、
「ヴォイストレーナーを探そう」と考えた時点で、
そこには相当な想いがあるわけです。
その想いを、受け止めて、原因を探り当て、
解決策を提示し、
二人三脚で解消していくのがヴォイストレーナーの仕事です。
だからこそ、
明確なゴールと、解決するまでのプロセス、
そして、必要なレッスン期間を提示できなくてはいけない。
少なくとも、そうできるように、
日々学び、あらゆる手段で情報を集め、
さまざまな症例を元に、
実験や検証を繰り返す必要があります。
そう考えると、
ヴォイストレーナーの仕事はお医者さんの仕事に限りなく近い。
お腹が痛くて七転八倒して病院に駆け込んだ患者さんに、
処方箋も出さずに、
いきなり食事指導をするお医者さんはいません。
指を切って、血がだくだく流れているのに、
漢方薬がいいんですよ、なんて、
のんびり漢方薬を煎じるお医者さんもいない。
風邪引いて高熱が出ている患者さんに、
「なるほど〜。じゃ、まずはストレッチからやりましょうか。」
なんて、お医者さんがいたら、ぶっ飛ばしたほうがいい。
でも、そんな「やぶヴォイストレーナー」の話は、
うんざりするほど、たくさん聞こえてきます。
自分自身のメソッドを何度も見直す。
検証する。
体系化する。
俯瞰する。
さまざまな分野の専門家や、優れた先人の指導を仰ぐ。
学ぶ。
学ぶ。
学ぶ。。。
SNSやブランディングや営業に精を出して、
やたら生徒さん集めをする前に、
やらなくてはいけないことは、
まだまだ腐るほどあるのです。
自戒を込めて。

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