大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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情報じゃない。オーラに感動するんだ。

   

学生時代から本屋さんが大好きでした。
それは今でも全く変わらなくて、
本屋さんという空間にいるだけでワクワクが止まらなくなります。

学生時代は、神保町の本の取り次ぎ店でバイトしていました。
特に本を自由に読ませてもらえたわけではありませんが、
とにかく本に触ったり、背表紙を読んだりするだけで、
めちゃくちゃ心が豊かになったものです。

本好きの心の故郷・神保町は、右を見ても、左を見ても本屋さんだらけで、
バイトの行き帰りも毎日幸せでした。

とはいえ、学生ですから、お金がありません。

当時の私の夢は、
三省堂書店で、気になる本を片っ端から手に取って、
値段とか一切見ずに、レジの上にドカンと山積みにして、
「これください」と大人買いすること。

お仕事をはじめて、最初に本の大人買いをしたときは、
実に感無量で、その幸せを噛みしめたものですし、
今でも、本屋さんでどかっと本を買うたびに、
なんとも満たされた気持ちになります。

私を幸せにしてくれるのは、
ブランドものでも、高級品でもないんですね。
抱えきれないほどの本。
はぁ〜。幸せ。

スマホが世界中の人たちの、音楽との付き合い方を変えたように、
Kindleは読書家たちの生活を大きく変えました。

もちろん、私の生活も変わりました。

そもそも本は文庫よりハードカバーで読みたい私。
バッグにはいつだって、ノートと本が入っていたし、
国際線に乗るときなどは、3冊くらいバッグに突っ込むもんで、
機内持ち込みの荷物はいっつもぱんぱん。

それが、iPad一個持てば何冊でも好きなだけ本が読めるようになったんです。
すんごい幸せ。
これで、読書量がさらに増えるわい。。。。

と、思ったものだけれど・・・これが、違ったんです。

いや、もちろん、荷物は軽くなったし、
読みたいと思った本に直ぐにでもアクセス出来るようになったし、
なにかを知りたい、学びたいと思った時のインプット材料には事欠かないし。

でもね。

やっぱ、Kindleって、イマイチ、本じゃない。

なにそれ?って思うでしょ?
でもね、この「イマイチ、本じゃない」って感じが、
ものすごくしっくりくる存在が、アレ。

やっぱりね、本でも、音楽でも、ネットに乗っかった段階で、
それは「モノ」じゃなく、情報。単なるデータ。

モノには特有のオーラが宿ります。

本やCDには、
独特の手触りとか、重さとか、匂いとか、
触れるときの指先の感触とかがある。

モノには、デザイナーさんとか装丁屋さんとか印刷業社さんとか、
物作りに関わったすべての人たちの
それらを実際にお店まで運んでくれた人たちの、
店先に並べてくれた人たちの、
たくさんの人のエネルギーが宿っていて、

それが、著者やアーティストたちの力と共に、
モノを特別なものにしている。

私はどうやら、本のくれる情報や知識よりも、
本というオーラにぞっこんなようです。

時代はどんどん「〜レス」な方向に流れているけれど、
クリエイターのはしくれとして、
モノに宿る魂やエネルギーの存在だけは、ずっと忘れずにいたいと、
今日も本のページをめくりながら、思うのです。

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