大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「嫌い」なものは「嫌い」

   

人の好みはいろいろです。

 

納豆が大好きな人もいれば、あの匂いには我慢ならないという人もいる。

甘いものがなくちゃ生きていけない人もいれば、
辛いものがないと、食事の満足度が低いという人もいる。

 

誰もが「好み」というものを物事の判断基準、選択基準にしているわけで、

それぞれ、自分の「好み」を大切に思っていますし、
それなりに、自信も持っているでしょう。

 

しかし、です。

 

自分が「いい!」と思ったものに、
その場にいる、自分以外の全員が「NG!」を出したり、

反対に、自分は「うわ〜。無理だぁ〜」と思うものを、
回りのみんなが褒めそやしたりと・・・

 

自分自身の「好み」に自信がなくなった経験はないでしょうか?

 

 

例えばプロ・ミュージシャンを目指して修行に励んでいた頃、

 

いわゆる「売れている音楽」を聞いても、
全くピンと来ないどころか、
虫唾が走るほど嫌悪感を覚えるようなことが多々あって、
自分は、おかしいんじゃないかと真剣に悩んだことがあります。

 

高校時代の友達の集まりにでかければ、

「ねぇねぇ、○○ちゃんの武道館のコンサート、チケット取れた〜?」
「あ〜、あたし、すごくがんばったけど無理だった〜」
「そうそう、最近の、あの曲、いいよね〜」

と盛り上がっていて、

私はその人の鼻にかかった声を思い出しただけでも、
寒気がするほど嫌だということを悟られないように、
ニコニコしているのに苦労してしまったり。。。

 

先輩ミュージシャンに、

「いやぁ、△△くんのライブ、今、手伝ってるんだけどさぁ、
曲がいいのよ〜。やってて、ぐっとくるのよ〜。」と言われ、

「私、音楽的に、あの手の曲とか、歌詞とか、どうしても興味持てなくて・・・」
と言ってしまったがために、

お前はわかってない、だからダメなんだと、
延々とお説教されるハメに陥ったり。。。

 

そんなことを繰り返しているうちに、
だんだんと、自分はずれているんじゃないか、
イケてないんじゃないかと不安になります。

 

「好み」、もっと言えば、「価値観」に自信がなくなるのです。

 

これほど恐いことはありません。
つまり自分の人生が根底から揺らぐのですから。

 

 

しかし。

私は、こんなときこそ、自分自身という人間の真価が問われるのだと考えています。

 

カメレオンのように、巧みに、まわりの価値観に自分を染めて、
しなやかに、したたかに、業界で生き残って行った人もいます。

 

「わかる人だけわかればいいし、オレは何にもわかんなくて結構だし」と、
達観して、マイペースに我が道をゆく、という人もいます。

 

冷静沈着に、周囲の価値観と自分自身の価値観との違いを見極め、
計算し、調整し、見事に新しい文化へと昇華した人もいます。

 

理解しあえない周囲に、さっさと見切りをつけ、
新天地を求めて、勇気を持って、旅立った人もいます。

 

そして、
「どうせ、ギョーカイのやつらなんか、日本人なんか・・・」と、
ふてくされて、飲んだくれて、くだを巻いていた人もいます。

 

 

 

一度きりの人生なら、
共感しあえる人は、ひとりでも多い方がいい。

自分が本当に素晴らしいと思うものを、
同じように、素晴らしいと感じる人たちと、
一緒にいられたら、人はどれだけ幸せでしょう。

 

媚びず、迎合せず、あきらめず、ふてくされず、押しつけず。

共感し合える仲間を求めて、
今日も必死に自分自身を表現できる道を探すのです。

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 - Life, 音楽

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