音源はお金を出して買ってくださいね。
レッスンなどで、「歌いたい曲を持ってきてね」というと、
いきなりスマホでYouTubeを再生しだす子がいます。
もちろん、この時代、YouTubeは音楽家の必需品のようなものですし、
YouTubeのおかげで新しい音楽に出会えることもあれば、
有名になる人もいる。
最早、現代文化の一部のようなものですから、
自分のライブラリーのようにつかうことを、とやかく言うつもりはありません。
しかしです。
仮にもその歌から何かを学ばせていただこうという人は、
やっぱり、どんな形ででも、お金を出して買いましょう。
制作者、著作権者へ敬意を表するのはもちろんなのですが、
理由は他にもあります。
「コーヒーが一杯60円の時代に、
レコードは今とおんなじ、2500円だったんだぜ。」
父がよく言っていました。
昭和30年頃のことでしょうか?
それでもレコードが欲しいから、兄弟でお小遣いを出し合って、
あれを買おう、これを買おうともめながら、買ったレコード。
大切に、大切に、何回も聴いたことでしょう。
椅子に座って、針を落として、
2つのスピーカーのど真ん中に座って、
レコードのジャケットやライナーノーツを何度も眺めたのでしょう。
父のレコードはどれも、ジャケットがボロボロになっていました。
そんなレコードとのつきあい方から、
音楽への愛情や愛着が育まれていきます。
音楽の聴き方は自由です。
ちょちょいのちょいであらゆる音楽が自分の手のひらにおさまる。
そんな魔法のような世界を、
父の世代の人はどれだけ夢見たことか。
時代が変われば、人間との関わり方も変わるように、
音楽との関わり方も変わる。
当然のことです。
しかしね。
誰かに興味を持つ。
その人をもっともっと知りたいと思う。
そうなれば、LINEだけの付き合いでは物足りなくなるはずです。
プレゼントをしたり、手紙を書いたりする。
会いたくてたまらなくなる。
毎日一緒にいたくなる・・・
愛情は相手との距離を縮めることで深まるもの。
それは世の中がどんなに移り変わっても、変わらない、
普遍的で大切なことです。
お金を払って買う。手元に置く。
音楽への愛情を育てる、最初の一歩です。
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