大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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ゼロ地点に戻れる曲は あるか?

   

KIMICOKOライブ以来、不定期ながら朝練を続けています。
最近のお気に入りはアレサです。

アレサを歌うと、ボロカス言われながら、必死で通っていた歌の学校時代に、一瞬で引き戻されます。

時はブラコン全盛期。
レッスンで、ジェフ・ベック・グループの曲を歌いたいと持っていったら、講師の先生に、「R&Bを持ってきてちょうだい!」と不機嫌そうに突き返されたこと。

自分の選曲のなにがいけなかったのか、そもそもR&Bってなんなのか。
考えあぐねて、同期の関西出身のボーカリストで、憧れてたコイワくんに電話をかけたんだっけ。
コイワくんに、「R&Bって、なに?」と聞いたら、「R&Bは、そーね、オシャレやね」と、気取って答えてから、「まずはアレサや。後はアリスタかハイレコードのレコード聴くとええよ。」って教えてくれたっけ。

東京タワーでのバイト帰りに三田図書館で、アレサのベスト盤と、フィルモアのライブと”You” ってアルバムを借りてカセットに取り込んで、歌詞カードコピーして…。
図書館のレコードはボロボロでしたよ。

何日もかけて、”Think”や”Respect”を完コピしたな。
結局、本当に歌えるようになったのは、それから何年もしてからなんだけど。

初めて単独でライブを企画して、アレサや、グラディス・ナイトなんかをいっぱい歌ったら、ライブに来てくれた友だちに口々に、「すげー!ジャニスみたいじゃん!」って言われて、「あたしはしょせんR&Bってやつは歌えないんだ」と、なんだか落ち込んだことも鮮明に思い出します。

そうそう、初めてライブやるって言ったら、メイクなんかからっきしだった私のために、父が舞台メイクの本を買ってきてくれたな。
ドーランとか、つけまつげとか、あまりに「舞台」用のメイクで、わけわかんなくて、青山のスパイラルビルに勇気出してメイクしてもらいにいって。
帰ってきたら父がやたらと「お前、おんな前あがったぞー。いいぞー」褒めてくれたな。
姉が、オレンジの和服みたいな布で、不思議なステージ衣装つくってくれたなぁ…。

アレサを歌うと、そんなゼロ地点にすっと立ち返ります。
ちっちゃなライブだったけど、もう、めいっぱい、全力で。
怖くて怖くて、いっぱい泣いたこととか。
漠然とした夢とか、遠い遠いかすかな希望とか。
鉛のおもりを引きずりながら歩いているような、苦しい毎日だったよなとか。

でも、この時のライブが、私のそれからを大きく変えてくれることになりました。
それはまた別の話。

あなたをゼロ地点に戻してくれる曲はなんですか?


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